PET検査を受ける方へ

【PET検査でわかること】

 FDGは前記した通りブドウ糖に似た物質で、がん細胞によく集まります。がんは活発に
 自分の細胞を増やて大きくなるため、たくさんのエネルギーを必要とし、正常細胞の
 3~8倍のブドウ糖を摂取します。PET検査はこの性質を利用し、(1)他の検査でみつ
 かった腫瘍が『がん』か(2)広がりはどれくらいか(3)再発・転移の有無(4)治療
 効果はどうか-などを調べます。

   

【PETを使ったがん健診】

 2017年現在、全国で約87施設がPETを使ったがん検診を実施しています。がん検診の
 有効性の評価には非常に長期間の追跡データが必要なため、まだ有効性を示す充分なデ
 ータがそろっていないのが現状です。しかし、全施設でいろいろながんが発見されてい
 ます。公式に統計を出している施設はすくないですが、発見率は概ね1~2%です。
 これは受診者100人のうち、1人か2人にがんが発見されていることになります。他
 の健診と比較 すると10~50倍の発見率です。発見されたがんは多岐にわたってい
 ますが、肺がん、甲状腺がんや大腸がんが多く占めます。
 がん検診目的ににPETの有用性は以下のようになります。
 既にがんと診断されている方やがんを疑われている方の場合、必ずしも以下の通りにな
 りませんので ご注意ください。

  ・PET検診の有用性が高いがん(必ず見つかるわけではありません)
    ・頭頸部がん(鼻や喉のがん)、肺がん、乳がん、すい臓がん、胆のうがん、
     大腸がん、卵巣がん、子宮体がん、悪性リンパ腫
     このうち、肺がん、乳がん、大腸がんはPETよりも制度の高い検査として
     胸部CT(肺がん)、マンモグラフィ/乳腺エコー(乳がん)、大腸カメラ
     (大腸がん)が存在しています。
     また、生理中は子宮体がんの診断が難しくなります。

  ・PET検診で写ることもよくあるが、写らないことも多いがん
    ・甲状腺がん、胃がん、前立腺がん、子宮頸がん
     甲状腺がんには頚部エコー検査、胃がんには胃カメラ、前立線がんには
     腫瘍マーカー検査、子宮頸がんには細胞診がそれぞれ有用です。

  ・PET検診の有用性が低いがん(場合によっては見つかるこもあります。)
    ・食道がん、すい臓がん、腎がん、膀胱がん、脳腫瘍
     食道がんには胃カメラ、すい臓がんは腫瘍マーカー検査や腹部エコー検査、腎
     がんは腹部エコー検査、脳腫瘍は頭部MRIが有用です。膀胱がんは頻度が低い
     うえに単一で十分な精度を持った検査がなく、膀胱がんがん検診はあまり一般
     的ではありません。(何らかの理由で膀胱がんが特に心配な方は、泌尿器科医
     にご相談ください)
 ※なお、上記の検査のうちすべてを当院で行っているわけではありませんので、詳細は
  当院検診センターにご確認ください。


【PETの弱点1】

  PETは多くのがんの発見に有効で早期がんを見つけられるケースも多いのですが、残
  念ながら不得意分野もあります。
  まず、小さなもの、特に1cm以下の腫瘍は機器の限界で写らないことがあります。従
  って、超早期がんを見つけることができるというのは過大広告です。
  また、がんのできる場所によって、PETによる見つけやすさが大きく異なり、あらゆ
  る検査の中でPETが最も有用ながんがある一方で、PETではほとんど見つけられない
  がんもあります。PETで見つけにくいがんを重点的に調べるためには、ほかの検査を
  組み合わせることが必要となります。


【PETの弱点2】

  FDGはがんだけでなく炎症にも集まることがあります。集積部分が本当にがんなの
  かどうかを判別するためには、ほかの体の情報(熱や痛みといった炎症の有無など)
  や、ほかの画像などを参考にします。一部の甲状腺腫瘍や大腸ポリープなどの良性
  腫瘍にも集積することもあり、これらの判別には専門的知識が必要となります。
  当院は経験豊富な専門医が診断し、できる限りあいまいにせず判断しますが、どう
  しても区別のつかないケースが出てくることはご理解ください。


【もし、異常がみつかったら】

  すべての集積が『がん』ではないので、まずは落ち着いて、次に何をしたら良いか
  医師と話し合いましょう。多くの場合、集積が何を意味しているのか、ほかの方法
  で確認することが必要となります。
  PET検査では正確な位置がわからないこともあるので、CT・MRI検査が必要となる
  こともあります。PET/CT検査では簡易的なCTを同時に撮影するので、位置や病気
  の性質についてのより正確な情報を得ることができますが、さらに正確性を上げる
  ために造影CTなどの検査が必要になる場合もあります。

  繰り返しになりますが、すべての集積が『がん』ではありません。異常があったと
  言われても、落ち着いて医師の話を聞いてください。仮にがんであっても治療可能
  な場合は多いので、それぞれの専門医に相談し冷静に対応してください。


【被ばくは大丈夫?】

  福島の原発事故以来、放射線の健康被害についての情報が数多く流れました。その
  中には、医学的にありえないほど危険性を誇張した誤情報も多く、多くの人が放射
  線のことを冷静に判断できなくなっています。実際には100ミリシーベルト以下の
  低線量被ばくでは、健康に影響があるかどうか分からないほど影響は小さいのです
  が、いずれにせよ放射線は浴びないに超したことはありません。
  注射の量、体の状態にもよりますが、PET/CT検査ではないPET検査で浴びる放射
  線は2~4ミリシーベルト、PET/CT検査ではCTの被ばくが加わるため、約10ミリ
  シーベルトです。PET-CT検査は診断精度が高いかわりに被ばくが多くなります。
  当院では病気を既に疑っている方にはPET/CT検査を、人間ドックは従来どおりの
  PET検査を推奨しています(がんがあるかないかを調べる上では、従来のPET検査
  でも十分な精度があります)。
  以上の通り、PET検査やPET/CT検査では少量の被ばくがありますが、PET検査や
  PET/CT検査の放射線によって健康被害が起きることはありません。


【よりよい検査を受けるために】

  最初に、自分が何を知りたいのかをよく考えてみましょう。他施設で血液検査や胃
  バリウム検査などをしている方や、簡単な検査で全身を検査してみたい場合はPET
  検査だけか、腫瘍マーカーを加えれば充分でしょう。PETで見つからないがんがあ
  ることは理解しているが、時間がないのでPETだけ受けたいという方もいるでしょ
  う。
  しかし、ほかの検査をまったく受けたことがない方、PETで見つかりにくいがんも
  詳しく調べたい場合は、ほかの検査を組み合わせた方が良いと考えます。喫煙歴が
  長い、肝炎になったことがあるなど、がんになりやすい因子を持っている方は心配
  しているがんを調べる検査を加えることも重要です。判断が難しければ、健診担当
  医師にご相談ください。
  PETはがん発見に強力な武器となります。正しい知識を持って有効利用し、健康な
  生活にお役立てください。




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