■呼吸器外科
当院呼吸器外科は前身の南一条病院時代より呼吸器外科領
域の手術に積極的に取り組んでおり、2004年4月の開設
以来、2011年8月末までに約2800例を超える手術を
行っています。診療内容では、原発性肺癌を中心として、転
移性肺腫瘍、縦隔腫瘍、良性肺腫瘍、悪性胸膜中皮腫、気胸
その他の胸部疾患の外科治療を現在は、4人のメンバーで行
っており、手術件数は、2010年度の手術総数が409件
そのうち原発性肺がんの手術件数は191件と北海道では
最多となっています。
●2010年業務実績
呼吸器関連疾患に対する手術症例数:409例
手術内訳: 原発性肺がん症例:191例
肺葉切除 :156例
転移性肺腫瘍症例: 24例
良性肺腫瘍症例 : 2例
縦隔腫瘍症例 : 18例
気胸症例 : 93例
胸腔鏡下生検 : 20例
(肺生検、リンパ節生検、胸膜生検等)
年度別疾患別症例数の返還
【原発性肺がんの治療】
1.手術療法
アプローチ法(胸腔鏡使用など)、切除方法(術式)
など、いくつかの要素があります。たとえば、創が小
さくても肺の切除量が多ければ、肺機能はある程度損
なわれますし、その逆のこともあります。当院では、
気胸をはじめとする良性疾患のみならず肺がん手術に
関しても胸腔鏡手術を積極的に導入しております。
これは従来の標準開胸手術に比べて侵襲が少ないため
術後の患者さんの回復が早いこと、ひいては早期社会
復帰を狙ってのことでありますが、決して胸腔鏡下手
術にとらわれず従来の開胸手術で両者の利点をいかし
た治療を心がけています。
2.胸腔鏡手術
手術療法としては、開院当初より内視鏡を用いた手術
(胸腔鏡下手術)を導入し、より多くの患者さんへ適
応できるよう努めてきました。現在、肺がん手術のう
ち約80%は胸腔鏡を使用した手術です。ただ、すべ
ての患者さんが適応となるわけではなく、進行度や合
併症を検討して慎重に手術方法を決定しています。
3.開胸手術 従来の(標準的)手術
当科で行う開胸手術の多くは10~15cm程度の
切開で行う小開胸度手術です。
以前は標準的開胸法であった後側方開胸(背中から
前胸部)まで30~40cmの切開)は近年ではほと
んど行うことはなくなりました。
手術内容に関しては年代別にみると難易度の高い手術
がますます増えてきており、当院での開胸手術割合も
それに伴い次第に増加してきていますこれは、道内で
も数少ない呼吸器専門病院としての周囲からの期待の
表れあると自覚し、当院を受診していただいた患者さ
んにとって当院で施行可能な最善の治療を提供してい
きたいと考えています。
年度別原発性肺癌手術アプローチ法の返還
(肺の切除術式)
1.肺がんの標準的な手術術式は、肺葉切除+リンパ節郭
清です。ただし、完全切除をするために、2葉切除や
肺全摘術を行うこともあります。しかし、なるべく全
摘をさけるように、気管支形成術や肺動脈形成術を症
例に応じて行っています。
2.近年の画像診断技術の向上に伴い、早期の小型肺がん
が早い段階で発見されるようになりました。
これに対して肺機能を温存しながら、根治性も損なわ
ないという手術方法です。なかでも、ごく早期の肺が
んの場合には、場所によってはさらに小さく切りとる
方法として、部分切除も行っています。
3.進行がん(大きい腫瘍、リンパ節転移の明らかな腫瘍
などの)場合には、呼吸器内科と連携して術前化学療
法を行い、病巣を小さくしてから切除を行うという治
療のオプションがあり、適応を慎重に検討しておりま
す。
年度別原発性肺がん手術術式の推移
肺がんは手術に加えて術後補助療法などの修学的治療が必
要となる場合があります。また、根治手術を行った患者さ
んのうち、何割か術後再発をきたし、その際抗癌剤治療等
が必要となることもあります。幸い当院呼吸器内科は術前
診断は勿論、術後の補助療法に関して全国トップレベルに
あり、このため患者さんに対して常に高いレベルの包括な
治療を協力して行う事ができます。
【気胸】
気胸(特発性自然気胸、続発性気胸)は、何らかの原因で
肺に穴があき、胸腔(胸の器の中)に空気が漏れて貯まる
病気です。
10~30歳代の若い男性、または70歳代の男性に多いです。
症状は急激に出てくることがほとんどです。なかでも、緊
張性気胸(胸の中の圧が以上に高まる状態)は、緊急処置
が必要な場合危険状態です。再発を繰り返す場合は、空気
の漏れが止まらない場合、出血を伴う場合などには、手術
を行っております。手術は99%胸腔鏡下手術を行っていま
す。若年者に発症した場合の手術に関しては、術後平均約
2-3日での早期退院が可能になっております。
年度別気胸手術数の変還
【転移性肺腫瘍】
転移性肺腫瘍の手術適応については、原発部位(もとにな
っている癌)によって、検討する必要性があります。手術
を行う場合は、機能をできるだけ温存するよう肺部分切除
を基本とし、可能な限り胸腔鏡手術を行っています。
【縦隔腫瘍・胸腺関連疾患】
縦隔腫瘍としては、前縦隔に発生する胸線腫が最も多いで
すが、他に胸腺がん、胚細胞腫瘍、神経原発性腫瘍など多
岐にわたります。疾患ごとに治療方針を検討し決定してお
ります。